転職先は『うらめし屋』番外編

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「さーてと! それじゃ私は現世に行ってお仕事してきます! 磐田さんも久々にご一緒しません? 今日は心霊スポットじゃないですけど」  俺たちの仕事は、現世――生きている人間たちの世界――の各地にある心霊スポットに赴き、遊び半分で近づく人間たちを驚かせて追い払うのがメインだ。心霊スポットの中には危険な悪霊が住み憑いていることもあるので、下手に近づけば生きている彼らに危害が及ぶ。それを防ぐのだ。ただ、それだけじゃない。住み憑いている霊自体に害が無い場合は、人間ではなく霊の方を守ることもある。人間の悪意に触れたら、悪霊になってしまうかもしれないからだ。  中には、心霊スポットではなく、お化け屋敷の中でスタッフとして働く霊や、自殺しようとしている人間の目の前に立って自殺を止めるような仕事をしているメンバーもいる。極端な話、驚かすことで役に立っているメンバーが集まる、自由度の高い職場だ。  橋本は心霊スポットでの仕事が中心のはずだが、今回は違うらしい。 「どういった内容の案件ですか?」 「落とし物探し、かな。亡くなった場所の周辺を彷徨っている霊がいてね。何か大切なものを探しているらしいの。見つかるまでは霊界に来てくれなさそうだから、探し物を見つけた方が早いかなって」 「なるほど。それなら、磐田さんが適任ですねえ」  なんでだよ、と言おうとしたがやめた。他の在籍メンバーのメンツを考えれば納得だったからだ。落とし物を増やしそうな若者に、見ただけで霊を成仏させそうな顔面凶器なおばさん、落とし物を見つけても無言でその場に立ち尽くすだけで知らせてくれなさそうなおじさん。誰を連れていっても活躍する姿が浮かばない。それぞれの得意分野を生かせば、素晴らしい働きをしてくれるメンバーばかりなのだが、いかんせん個性的すぎる。
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