転職先は『うらめし屋』番外編

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 指輪の形状や色や材質などの特徴を聞いて探し始めたはいいものの、そう簡単に見つかるわけもない。排水溝に落ちて流れてしまったかもしれないし、誰かが拾って持って行ってしまったかもしれない。夜が更けるまで探したが、三人とも見つけることはできなかった。 「もう……今度こそ諦めるしかないですよね。実は私、お二人が来る前、もう諦めちゃってて。お二人に元気をもらって、もう一度だけ探そうって思ったんです。でも、いつまでも巻き込むわけにはいかないし……」  霧崎の弱音が漏れる。俺たちは自分たちから巻き込まれにいったわけで、迷惑などとは思っていないが、彼女の透けた身体を見れば、時間がないのは事実だ。いつまでも現世に居たら、彼女が消えてしまう。 「いったん、もとの場所に戻ってみましょう。ほら、電柱下暗しっていうし!」  灯台下暗し、な。確かにスタート地点は電柱だったけど。俺たち三人は橋本の助言に従い、霧崎が亡くなった場所まで戻った。すると、件の電柱に女性が一人花を添えていた。 「お知り合いですか?」  俺が尋ねるも、霧崎は首を傾げるばかりだ。彼女の記憶が失われていないのなら、知り合いではなく、花を手向けているだけの通行人か。
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