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「ありえねえ」
そう幼馴染みであるヒーローは口走り
冷えきった手で缶ビールを流し込んだ。
世はまさにクリスマス・イヴ。
きらびやかに飾られたイルミネーションが
あちらこちらで輝いている聖なる夜。
雪もちらつき、恋人たちは腕を組んだり指を組み合わせて繋ぎ、これ見よがしに幸せアピールする夜。
隣で上着も羽織らず鼻を啜っているヒーローはもう一度 ぐいっと缶を傾けると白い息を吐いた。
本名田中 裕
幼馴染みで子供の頃から口が悪く、口より圧倒的に手や足が出るのが早い。
いわゆるガキ大将的な?ボス的な存在。
何故ヒーローなのか。
それは小学校三年の頃に遡る。
当時公園というものは子供達の戦場だった。
やれサッカーをやるだの、ドッジをやるだの、場所取りは早いもの順ではあるが力がある者が現れれば自然と譲らなくてはならない。俗にいう年功序列というもの。
いつもならば低学年が早く帰宅するので滅多に上級生と鉢合わせも無いのだが、時折ある行事ごとのせいで上級生も早帰り。
見事鉢合わせた五年生と睨み合いになった。
自分はベンチで本を読みながらチラチラと様子を伺っていただけだけれど、あの緊迫感は我が身の事のようにハラハラしたのを覚えている。
体格もまるで違う上級生に向かってこの田中裕は堂々たる勇姿で食ってかかった。
そして、ぼろくそにやられた。
しかしそれ以来、上級生も一目置くようになり誰かの親が学校に話したのかこっぴどく叱られた上級生は低学年がいる時はそれなりに配慮するようになったとか。
かくゆう自分はあだ名で幽霊と言われるほど無口で存在感がない。それで苛められることは無かったけれど、友達という友達もヒーロー意外いなかったかもしれない。いや、
苛めに合わなかったのはもしかしたらこのヒーローがいたからかもしれない。
小さい時はよくヒーローが守ってくれたから
そんなヒーローがなぜこんなところにいるのか。確か高校卒業後県外で就職したと聞いたけど...
自分の家のアパートの前には公園があった。
そう、場所取り争奪戦が繰り広げられた戦場だ。子供の頃はやたら広く感じたこの公園も大人になるとそれほどでも無かったことに気づく。テニスコート一面ほどの空き地と動物の形をした遊具が3つ程しかない。滑り台はテープで囲われ、箱ブランコも動かない。
真っ白に雪で化粧したその箱ブランコに
なぜかヒーローがいた。しかも夜中。
防寒具の一つも身につけず、近所の子供が作ったらしき雪だるまに寄り添うように。
「あれ薫ちゃんじゃん」
近づくとほろ酔い加減の赤い顔でそう言う
「何してんの?」
それはこっちの台詞。
顔に出ていたのかヒーローは白い吐息と共に吐き出した。 ありえない と
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