クリスマスギフト

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「あれぇ、ケーキは?」 こたつから一歩も出ようとしないヒーローはテレビをつけると歩み寄った自分に振り返った。 「食べようよぉ」 駄目。 「いいじゃん、クリスマスだよ」 絶対だめ。 首を振るとヒーローはしかめっ面でこたつに顎をのせた。 「けち」 そう言ったあとで ああ、そうか と振り向く。 「そうだよな、おばさんと食べた方がいいか 」 分かってくれたようで。 酔いざましにとコーヒーを差し出すと 「どこもかしこもクリスマスだとさ」 テレビのリモコンを弄びながらそう呟く。 「何がクリスマスだ。 こっちは家も恋人も更には一文無しで クマスだっちゅーの」 ...うまい。 一人思わず笑ってしまいそうになり、顔を背けるとヒーローは そういえば とこっちを見つめた。 「薫ちゃんは独り身なん?」 今更か。 明らかに顔に出たと思う。その表情をみてヒーローはにやりと笑った。 「そうかそうか」 なんだろう、このもやもや感。 嬉しいじゃなくて絶対あれだね。 自分だけじゃなくて良かったっていう安堵だよね。 「じゃあさ」 今度は何だろう 付き合おう とか言うだろうか... さすがにそれはないだろうと顔を向けると いかにもいたずらを仕掛ける子供のような顔でヒーローは言った。 「抱いてやろうか」 は? これも顔に出たのだろう。 呆気にとられた自分の顔を見てヒーローは 爆笑してる。 意外と笑い上戸なのかもしれない。 「嘘だよ、嘘! そんな顔すんなって顔真っ青だったよ」 ばんばんっ、こたつを叩くとヒーローは身を沈めた。 こたつ布団にくるまり横になる。 「こんなのと一緒になりたい奴いねえってな」 そう呟いて、ヒーローは眠りについた。 目頭に雪の粒が光ってた。 本当に、なんでこいつはこんなにやさぐれているのか。しんどい時ぐらい誰かに寄りかかればいいのに。 ああ、でも。 と思い直す。自分も素直に口に出せたことなんてなかったなぁ。 だから今日はここに来たんだ。 大切な人にたった一言だけ伝えたくて 小さく息をつくと再び台所へ立ち上がった。
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