1、約束

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「餌、なに食べるの?  餌やりたい!!」 「…何も」 「何もって…?  なんか食べるでしょフツー?」 乃愛はユウギを振り返る。 「クリオネは  ミジン・ウキ・マイマイしか食べないし  ミジン・ウキ・マイマイは  北海道の海にしかいない」 「まじ?  じゃ、これ  なんにも食べないで生きてんの?」 ユウギはスマホゲームから目を上げない。 「川に逃がせって  オカンは言うけど  海に帰るからって」 「ありえね~!!」 乃愛の笑い声は アハハと突拍子もなく高い。 「すぐ食べられちゃうよザリガニとか鯉とかに  川より冷蔵庫の中の方が  まだ流氷に近いか…」 『流氷の天使』は 再びゆっくり瓶の底に沈み 眠りにつくように翼を閉じた。 「おれ、いつかお金ためて 北海道に持ってって 海に逃がすって、  そいつに約束してるの」 「ふううん じゃ、それまで 頑張れよ‼ 天使」 乃愛は、瓶をそっと冷蔵庫に戻した。 「ご飯食べてく?  オカンもうじき帰るし」 ユウギは母親と このアパートで二人暮らし。 「こないだのメンチカツウマかったなー  でも今日は帰るわ  毎回だと悪いし」 乃愛はかばんを持って部屋を出た。
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