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「餌、なに食べるの?
餌やりたい!!」
「…何も」
「何もって…?
なんか食べるでしょフツー?」
乃愛はユウギを振り返る。
「クリオネは
ミジン・ウキ・マイマイしか食べないし
ミジン・ウキ・マイマイは
北海道の海にしかいない」
「まじ?
じゃ、これ
なんにも食べないで生きてんの?」
ユウギはスマホゲームから目を上げない。
「川に逃がせって
オカンは言うけど
海に帰るからって」
「ありえね~!!」
乃愛の笑い声は
アハハと突拍子もなく高い。
「すぐ食べられちゃうよザリガニとか鯉とかに
川より冷蔵庫の中の方が
まだ流氷に近いか…」
『流氷の天使』は
再びゆっくり瓶の底に沈み
眠りにつくように翼を閉じた。
「おれ、いつかお金ためて
北海道に持ってって
海に逃がすって、
そいつに約束してるの」
「ふううん
じゃ、それまで
頑張れよ‼ 天使」
乃愛は、瓶をそっと冷蔵庫に戻した。
「ご飯食べてく?
オカンもうじき帰るし」
ユウギは母親と
このアパートで二人暮らし。
「こないだのメンチカツウマかったなー
でも今日は帰るわ
毎回だと悪いし」
乃愛はかばんを持って部屋を出た。
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