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ああ、歌がやみました。
代わりに司会者らしき人がステージにあがりました。
何事か語り、やがて片手をあげ、大きな声でカウントダウンを始めました。
ステージを囲む人々も同じように片手をあげ、同じようにカウントダウンを始めます。
もうマイクなどなくても、司会者などいなくても、カウントダウンは止まらないでしょう。ゼロと唱えられるまで必ず実行されるでしょう。
わたしの隣に座る老夫婦らしき二人はさすがに黙って事の成り行きを見守っています。そうです、カウントダウンを実行するのは、元気を有し、愛を有し、手をつなぐことのできる人を持つ者だけの権利なのです。
わたしにはその権利はありません。隣の老夫婦にもありません。ただゼロになるのをじっと待つだけです。
今のうちにと、闇色の空を眺めます。
青白い小さな星々を目に焼き付けます。
「ゼロ!」
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