01.少年は夢を見る

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『チャニョル、カイは何組なんだ?』 『…』 あれから数日が経った。 カイにお礼も含めて会いに行きたいのだが、友達の少ない僕はチャニョルしか頼れる人が居なかった。 それなのにチャニョルはまた黙りこむ。 『ちゃーにょーる!』 『ん?』 『カイのクラスにつれてけ』 『…zz』 『何で寝るの!』 チャニョルはずっとこの調子だ。 ハッキリ言って軽くウザいぞチャニョル。 『…もういいや、自分で探しに行ってくる』 席を立ち廊下へ向かうと腕を強く握られた。 チャニョルだ。 『ごめんごめん、…案内するよ』 カイは同じ学年らしいが教室の校舎が違うらしい。 僕たちが通っている学校はかなりのマンモス校で生徒だけでも1000人以上。 そんなに人が居れば普段顔の合わせない同級生も山ほど居る。 『こっちの校舎の方だったんだ、そりゃ知らないわ』 『カイはスポーツクラスの特待生なんだ。』 『なんで早く教えてくれなかったんだよ』 『それは…』 言葉を濁したチャニョルは立ち止まった。 『わ、何急に立ち止まって…』 僕よりデカいチャニョルが急に立ち止まるから、僕はチャニョルの背中にぶつかってしまった。 『チャニョルじゃん、久しぶり』 立ち止まったチャニョルの目の前にはチャニョルよりもデカいイケメンが立っていた。 『クリス!』 『こっちの校舎に全然来なかったよな、今日はどうした?』 『カイを探してるんだけど』 『ああ、カイならまた裏庭で寝てると思うよ。基本的に授業は出てないんだよな、アイツ』 『そうなんだ、相変わらずだな。サンキュー』 『あ、待って、俺も行く』 『ディオ、この人全然怖くないから大丈夫だよ。クリスって言うんだ』 僕よりもデカいチャニョルよりも更にデカいクリスの迫力で恐怖を感じていた僕はチャニョルの後ろにくっついて離れられないでいた。 『…ディオです、よろしく』 『ディオ?俺はクリス、よろしくね』 近づき難いイケメンクリスは意外にも友好的だった。 チャニョルの話では女の子の中でファンクラブが結成されており、なぜかクリスは女の子達から『隊長』と呼ばれているらしい。 そんなクリスとチャニョルと共にカイを探した。 裏庭に来る前の間僕たちは凄い視線を叫声を浴びまくった。 忘れていたがチャニョルも美形のイケメンだ。 更にファンクラブがあるクリスも居るから尚更女の子達の視線を浴びた。 『なんか…凄いね。クリスもチャニョルもイケメンだからかな?』 そう言うとチャニョルは驚いた。 『何言ってんだよ、ディオ。気づいてなかったのか?お前もかなり人気なんだぞ』 『え?』 『いっつも本ばかり読んでただろ?真剣に読んでるから誰も声掛けれないでいたんだ。お前の顔はこっちの校舎でも有名だぞ』 えええ、知らなかった…。 『大丈夫、何かあれば俺が絶対助けてやるから!』 そう言って僕の肩を抱くチャニョル。 叫声とカメラのシャッター音が交互する。 カメラを向ける女の子達にポーズを決めるクリス。 …なんだここは。 僕が知ってる世界じゃないみたいだ。 『ここが裏庭ね』 クリスの言葉に我にかえった。 凄い光景だったので今でも頭の中から離れない。 『…ああ、、うるさかった…』 『カイも同じ事言っていつも裏庭に逃げてくるんだ、ほらあそこで寝てるよ』 クリスは笑いながら言うとカイを指さした。 裏庭の木にもたれて眠ってるカイを見つけた。 手元には僕が貸した本がある。 …ちゃんと読んでくれてたんだな。 『カイ、起きろー。』 クリスがカイの肩を揺らし起こした。 『…ん?クリス?』 寝ぼけながらクリスの顔を見上げたカイは相変わらず綺麗な彫刻のような顔をしている。 『カイ、この前ディオを助けてくれたんだって?ありがとう』 チャニョルが声をかけると完全に目を覚ましたカイは立ち上がった。 『チャニョル!わー、久しぶり!ディオはチャニョルの友達だったんだね』 チャニョルの後ろから顔を出して軽く頭を下げるとカイはこの前見せてくれた笑顔をまた見せてくれた。 『この本読んだよ、すっごい面白かった。ありがとう』 カイは僕の本を手渡し言った。 『El Dorado?あー知ってる。黄金郷とか言う伝説の場所だよね』 返して貰った本を見てクリスが言う 『知ってるの?』 『もちろん、ロマンあって俺も好きだな。その本も読んだ事あるよ。』 ウインクをしながら話すクリスに僕は目を奪われた。 格好いいな。 『あ!あ!あ!俺もそれ早く読みたい!!!』 甘い空気が漂っていたであろう僕とクリスの間にチャニョルが割り込んで来た。 チャニョルに本を渡し話題はまたEl Doradoへ。 『どこにあるんだろうね?』 『かなり昔の噂だろ。存在してたと信じたいけど…その場所までは…なかなか行けなさそうだな』 『絶対あるって信じたいけどね』 そう僕が呟くとチャニョルは開いていた本を閉じた。 『探しに行っちゃう!?』 『なに言ってんだよ急に。無理に決まってんだろ』 クリスの言葉にカイも頷いた。 『夢見ようぜ!丁度夏休みもくるしさ!』 『でも確かあの伝説って…南アメリカの方じゃなかったか?いくらなんでも遠すぎるって…。それに旅行する金もないぜ、俺たち』 『ふっふっふっ。金の事なら心配ないさ、アテはある』 チャニョルはニヤリと笑った。 そのアテと言う人物、なんだか僕は想像がついてしまったような気がした。
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