いつか、一緒にお茶を

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 深紅の紅葉の下に置かれた、ダンボール。ふわふわのタオルの中から、その声は聞こえた。 『にぃぃぃ……にぃぃぃ……』  猫かな、と覗いてみて、私は予想が見事に裏切られたことを知った。  そこにいたのは、人間の赤ちゃんだった。  生まれたばかり……?  へその緒がついたまま、だ。  ぐっと握りしめられた手の甲には、生まれつきのものなのか、目立つ痣。  なんらかの事情で、妊娠したものの子どもを育てられず、ひとりで産んで捨ててしまう人がいる、と新聞で読んだことがあったが…… まさに、それ。  ── まさか、こんな事態に、遭遇してしまうなんて。  私は数秒間呆然として、それから我に帰って、赤ちゃんをタオルごと抱っこした。  生後間も無く捨てられた赤ちゃんの多くは、死んでしまうんじゃ、なかったっけ……?  少しでも早く、病院に連れていかなくちゃ。  最寄りの病院は、神社から徒歩15分ほどだ。  私は急いで、歩き出した。  ── 後で考えれば、救急車を呼んだ方が良かったのだろうけど、その時は慌てすぎていて、全然思い付かなかったのだ。  そのくせ、抱っこしたら赤ちゃんが泣き止んだので、ショックで死んだんじゃないかと怖くなってしまった。 おそるおそる、小さな胸に耳を近づけると、まだ、ちゃんと温かかった。 ── トクン、トクン、トクン ……  心臓の音が、こんなに安心するものだなんて、私はこの時まで知らなかった。  …… ああ、生きてるんだ…… 。  か細い手足が本当に弱々しくて、不安になってしまう度に、私は赤ちゃんの胸に顔を寄せて心臓の音を聞いた。  そして、できる限りの速足で病院へ向かった。  途中、記憶にある限りで初めて、神様に祈りながら。 ── 神様、お願い。この子を生かしてください。
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