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人を喰う
スパーン、パン……スパーン、パン……スパーン、スパーン、スパーン!!!
丑三つ時の静かな境内に鳴り響くスリッパの音を聞きながら、私はひとり行ったり来たりを繰り返していた。
神さま、どうか……どうか……どうか……
裸足の足の裏はときどき踏みつける小石がくい込み痛かったが、それも冷えと疲労でだんだんと感覚がなくなり今ではよくわからない。
始めはしんとした空気のつめたさに不安だった。それも走り続けるうち気にならなくなり、四十二往復めで着ていたダウンジャケットを脱ぎ捨てた。
はぁはぁはぁ……神さまどうか……どうか……どうか……
この日のために百円玉を百枚用意した。靴を置いたところに百枚置いて一枚握って走り、一枚ずつ置いていく。最後に賽銭箱へ全部入れようと思う。
か、神さま……はぁはぁ……どうか……どうか……
百円玉は最後の一枚になった。靴の横からすっかりかじかんだ人さし指と親指でつまみ上げ両手で握りしめると、おでこのところで念を込める。
神さま……どうか……神さま……!!
右手に持ちなおし、再びしっかり握りしめて私は何度もつぶやきながら走った。
百円玉の山の上に最後の一枚をのせる。チャリッとなって山はまたくずれた。
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