§ Year 10 / Summer Term 「Slipping Away」

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 部屋に戻るなりタイを緩め、ベッドの上にどさっと躰を投げだすように横になる。ジェレミー特製のあのドリンクを飲むと決まってふわふわといい気持ちになるのだが、あとからひどい怠さに襲われ、記憶や時間感覚が欠落することが多々あった。最初はなにかとんでもない麻薬のようなものを飲まされたのかと思っていたが、それはテディもよく飲んでいるようなものとそれほど違いはなかった。ただ、されているだけだった。だから抵抗感もほぼなく、テディはジェレミーの部屋に行くたびに彼らと一緒にそれを飲むようになっていた。  いつものあのサンドウィッチも食べたし、もうこのまま眠ってしまおうか――と、そう思ったときだった。  ばたんとドアの開く音がして、テディははっと飛び起きた。  つかつかと足音を立て、姿を現したのはルカだった。 「おまえが寮に入っていくのが見えたんだ……またあいつらの部屋に行ってたのか」  テディはなにも云わず、ただ溜息をついた。 「なんとか云えよ。なんで授業に出てこない」 「……俺のことなんかほっときなよ。それより、俺の真似してルカまで授業をサボることないだろ……さっさと戻れば」  ルカはそれを聞くと、呆れたようにぐるりと頭をまわして天井を仰いだ。 「――なんなんだよ……いったいどうしたんだよテディ。おまえ、イースターの休みのあと戻ってからおかしいぞ? 前にちゃんと、もうサボらない、勉強するって云ってそうしてたのに……なんで前よりひどくなってんだよ。もう今月なんだぞ試験は! そんなふうで――」 「ああもう、うるさいな――」  テディはそう云ってブレザーの内ポケットから煙草を出した。ルカはそのふてぶてしい態度に信じられない、と首を振り、そのまま部屋を出ていった。  煙草を咥え、ブックマッチを擦って火をつけるとテディは深々と煙を吸い、サイドテーブルの上にあったペプシコーラの空き缶にマッチの燃えかすを入れた。 「……無理だよ、ルカ。俺、もうルカとは……」  緩めた襟の中から黒い革紐を引っ張り出すと、テディはその革紐に通したペンダントのチャームをじっと見つめた。銀の十字架(クロス)と、Lと刻印されたプレート――鎖は切れてしまったが、床に落ちていたこれは無事みつけることができていた。けれど、なんと云えばいいのだろう。なぜ鎖が切れたのかと訊かれたら、どんな顔をしてどう答えればいいのだろう。  ――キスひとつで泣きだしてしまったときのようにまたルカを途惑わせてしまったら、自分はどうしたらいいのだろう?
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