録音♯2

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ーー誰を殺したんだ? 「まだ医大を退学する前。病に苦しむ余命幾ばくもない老婆から言われたんです」 (深い吐息) 「殺してくれ、と。望み通りにしました」 ーーその時お前はどう感じた? 手が恐怖で震えたか? それとも喜びを感じたか?  優越感や虚無感を思ったか? 「あなたには、ボクが何に見えます? 人には見えない? 何も感じない訳じゃない」 (短い溜息) 「老婆は生きる意味を失っていました。この世の中に絶望していた。死に別れた息子にただ、会いたがっていたんです。僕は老婆が穏やかに死に向かう顔を見て、時として人は死の間際に幸福を感じるのでは、と考えました。僕は老婆を殺しましたが、同時に幸福にもしたかったんです」 ーー自分が何を言っているのか、わかっているのか? 「勿論。これはある種の哲学ですよ」 ーー哲学などと軽く言うもんじゃない。お前が言っているのはただの愚考だ。 「急に善人を気取るの?」 ーーそんなつもりはない。ただ、お前のような人間が悠々とこの時代を生き抜いている事に嫌気が差しただけだ。 「じゃあ、次はあなただ。何で新聞記者になった?」
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