おおかみさん、ひつじさんには気をつけて?

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昼休み、屋上に行きこっそりとラブレターを読んだ。 内容はいたってシンプルなもので、桜色の便箋にただ『好きです』とだけ書かれてあった。 柔らかい文字で丁寧に書かれてありうっすらといい匂いもして好感が持てた。 差出人はどんなはかなげな美少女か。 だけど、ラブレターをひっくり返してみても穴が開く程見てみても、他には何も書いておらず、差出人が誰なのか、これをもらって俺がどうすればいいのかがまったく分からなかった。 まぁ、差出人に興味はあったけど、相手も返事なんて求めてなかったのかもな。 付き合うかどうかは別としてラブレターの差出人がどういう人物なのかを単純に知りたかったのだが…ま、いいか。 そう思っていたのだが、翌日も翌々日も毎日同じ差出人が書かれていないラブレターが俺の下駄箱に入れられていた。 内容はいつも『好きです』とだけ。 50通目あたりからいつまで続くのか興味が沸いた。 そして今日は記念すべき100通目の予定。 くぎりもいいしこれで終わりなのかもしれない。 ふとそんな事を思い心に寂しさが沸いた。 そこで初めて自分がこの差出人不明のラブレターを毎日楽しみにしていた事に気がついた。 何で今まで俺は黙って待つ事しかしなかったのか今更ながら悔やまれる。 もし99通目で止めてしまったらもう二度と差出人は分からないかもしれない。 俺はいてもたってもいられずいつもより1時間早く学校に行き、祈る気持ちで下駄箱を開け中を確認した。 まだラブレターは入れられていなかった。 ほっとすると同時にもう来ないのではないかとの不安も大きくなった。 俺はそんな気持ちを抱え、物陰に隠れて自分の下駄箱を見張った。 しばらくして人の気配がした。 息を殺して見守っていると野性味あふれる顔立ちの細っこい男子生徒が歩いてくるのが見えた。 纏う空気が孤高の獣みたいで、あぁ、狼だ。まさに狼にぴったりの雰囲気を持つ。 そのまま通り過ぎると思われた狼は俺の下駄箱の前に立つと中に何かを入れた。 ―――――え? そのまま何事もなかったかのように立ち去った狼。 狼の気配が消えるのを待ち俺は急いで下駄箱を確認した。 れいのラブレターがあった。 あいつがラブレターの送り主……? 俺はラブレターを袋から出すのも忘れ握りしめ必死で狼を追った。
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