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最近大上の様子がおかしい。
まぁ元々変ではあるんだが、更におかしいのだ。
大好きなはずの俺の側にいても嬉しそうでもなく、どことなく別の何かを考えている様子でそっけないし、時々溜め息をついたりもしている。
これは…所謂『倦怠期』というやつか?
それとも俺の本性に気づいて嫌気がさしたとか?
大上は羊の皮を被った俺が好きなんだよな。
でもそれならいつまでも、いつまで経っても俺たちは先輩後輩のままだ。
いや、でも、もっと完璧に羊の皮を被らないとそれすらも壊れてしまうのか?
俺はどうしたらいいのか分からず大上を見つめたが、目が合うとふいっと視線を逸らされてしまった。
――――!?
「大か「大上ー!今帰り?一緒にカラオケでも行かない?」……み」
俺の言葉は割り込んだ誰かに遮られてしまい、最後まで言う事はできなかった。
そいつの出現に明らかにほっとした顔をする大上。
は?
「あ、えっと…」
ちらりと俺の方を見る大上。
それってどういう意味…?
俺が邪魔って事なのか?
眉間に皺が寄りそうになり慌てて笑顔を作る。
「ともだち?」
「あ、こんにちわー。俺大上と同じクラスの伊倉正志って言います」
「どうも。俺は小野寺洋だよ。カラオケ行くの?」
「よかったら先輩もどうですか?」
「いや、俺はこのまま帰るよ。遅くならないうちに帰るんだよ。じゃあね」
俺は笑顔を張り付けたまま大上の方を見ずすたすたと歩き始めた。
追って来るならよし。
追ってこないなら……。
決断の時かもな。
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