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「ちょっとあんた!どういうことなのよ!何で私がこの女と一緒に煉獄行きなわけ!?」
「それはこっちの台詞よ!天国行きに相応しいのはこのあたしよ、あ、た、し!」
「なんですってぇ!?」
此処は、天国の門の前。
天国行きの者はこの扉を通り、煉獄行きを言い渡された者はその隣の扉を通って煉獄に行く。煉獄とは、天国に行くには少しばかり業が深かった者の行くところだと思ってもらえれば大体間違いではない。そこである程度罪や穢れを清め、労働などを行うことによって天国に行けるようになるのだ。天使になった俺の仕事は、この天国の門の門番だったわけなのだが。
目の前でおばちゃん二人が揉めている。それはもう超でっかいダミ声で騒いでいる。
悲しいかな、これはよくあることなのだった。天国行きではないと納得できない連中が、煉獄や地獄に行きたくないとごねて天国の門を開けろと喚き散らすのである。
――ちっくしょう……!俺が思ってた天使ってこんなんじゃないぞ!なんで死んでまでクレーマーなおばちゃん達の対応しないといけないってんだ!?これじゃ生きてた頃と殆ど変わらねーじゃねーか!
大体、何で自分の姿は生前のオッサンのままなんだろう。
羽根もなんか小さくてしょぼいし。なんか灰色にくすんでて汚いし。天使の輪っかもなんか灰皿みたいな変な形してるし。
おかしい。俺の思ってた天使ってこんなはずでは。
「もう一度言ってみなさいよこのクソババア!」
「はああああ!?クソババアって言った方がクソババアなのよ!」
「お前ら小学生か!?」
おばちゃん達の喧嘩はヒートアップする一方。天国に行けないのが納得いかない、から始まっていたはずのクレームが、いつの間にかその主題さえ忘れてお互いしか見えなくなっている。昔から犬猿の仲だった二人はその日も駅で大喧嘩をして、取っ組み合いになった結果ホームでつるっと足を滑らして線路に転落、仲良死となったらしい。こんなんで死なれた電車の運転手さんも実に気の毒な話である。
これではラチが明かない。俺は最終手段を持ち出すことにした。
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