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理想の相手
「霊掬の命!約束の百人達成したわよ!出て来なさい!」
私は深夜の神社に来ていた。人気のない境内に声が吸い込まれて消えていく。本当は昼間に来たかったが、またあの神にムカつくことを言われたら叫ばない自信がなかったので誰もいないこの時間にやって来たのだった。
《河上翠よ、よくやった。この短期間であの試練をこなすとは正直言ってそちの事を見誤っていたようだ》
その言葉と共に夜なのに眩い光が辺りを包んだ。声は一年前に聞いた神の声と同じだった。顔は後光によって見えないが大きな人影が目の前にある。どうやら今回は声だけでなく姿も現したようだった。満足そうな笑いを零し神は話を続けた。
《それでは約束通り理想の相手を紹介しよう。その相手とは……》
並みの相手だと許さないと思いっきりガンを付けて睨む。
《この霊掬の命である我じゃ!神である我はそちの理想通りの姿になれるしなにより懐も深い。収入もばっちりじゃ。今のそちには神と崇める信者もいるから我との婚姻も可能となったのだ。いや~そちは果報者じゃのぉ!》
神はこの胸に飛び込んで来いとばかりに両腕を広げて立っている。
「……」
《うん?どうした?嬉しすぎて声も出ぬか》
私が動かずにいると勘違いした神が近づいてきて触れようとしたので思いっきり手を叩き落とした。
「……ふっざけんじゃないわよ!誰がお前みたいないい加減野郎と一緒になるもんですか!お前と一緒になるくらいなら自分で相手を見つけてやるわよ!」
宣言すると私はこの場を後にした。我に返った神の喚き声もその時にはもう耳に入ってこなかった。神を頼るなんてバカだったのだ。
(あれだけ多くの人の縁を結べたのよ。自分の縁は自分で結ぶわ!)
自信に満ち溢れた私の足取りは軽かった。
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