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トイレから戻りたくないけれど、かといってどこかに居場所があるわけでもなく、定時までやり過ごすしかない。最も、ここは職場なのだから仕事さえちゃんとしていたらそれでいい……はず。
ちゃんと、出来てたら、だけど。長い。毎日が長すぎる……。
トイレから出るとそこに西野さんがいて、「ひっ」と、声が出てしまった。それに西野さんが小さくため息を吐いた。
「そんなに、驚かなくても」
「あ、いえ……ト、トイレですか? どうぞ」
どうぞも何の共有トイレだし、個室いっぱい空いてるし、パウダースペースも空いてるし、何だっていうのだろう。
「時間、まだあるのでカフェでもどうですか」
「……え、ええ、はい。カフェ。はい」
西野さんはお腹が重そうなので、私が少し先に進んでエレベーターのボタンを押した。
カフェに着くと
「座ってて下さい。私、買ってきます」
やっぱりお腹が重そうなのでそう言うと
「……大丈夫です。座ってるのもしんどいし」
と、少し笑ってくれた。
私はカフェラテを、西野さんはカフェインレスのものを頼んでいた。そうか妊婦さんにカフェインはよくないのか……と、それを見ながらぼんやりと思った。なぜ、カフェに誘ってくれたのかはわからないけれど、あと少しで産休に入るなら、仲良しの人と過ごせばいいのに。
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