第2話

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トイレから戻りたくないけれど、かといってどこかに居場所があるわけでもなく、定時までやり過ごすしかない。最も、ここは職場なのだから仕事さえちゃんとしていたらそれでいい……はず。 ちゃんと、出来てたら、だけど。長い。毎日が長すぎる……。 トイレから出るとそこに西野さんがいて、「ひっ」と、声が出てしまった。それに西野さんが小さくため息を吐いた。 「そんなに、驚かなくても」 「あ、いえ……ト、トイレですか? どうぞ」 どうぞも何の共有トイレだし、個室いっぱい空いてるし、パウダースペースも空いてるし、何だっていうのだろう。 「時間、まだあるのでカフェでもどうですか」 「……え、ええ、はい。カフェ。はい」 西野さんはお腹が重そうなので、私が少し先に進んでエレベーターのボタンを押した。 カフェに着くと 「座ってて下さい。私、買ってきます」 やっぱりお腹が重そうなのでそう言うと 「……大丈夫です。座ってるのもしんどいし」 と、少し笑ってくれた。 私はカフェラテを、西野さんはカフェインレスのものを頼んでいた。そうか妊婦さんにカフェインはよくないのか……と、それを見ながらぼんやりと思った。なぜ、カフェに誘ってくれたのかはわからないけれど、あと少しで産休に入るなら、仲良しの人と過ごせばいいのに。
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