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「……美味しくないな」
ぼそり、西野さんがそう言って、この空気に私も美味しくないけど
「あ、そうなんですか? カフェインレスって味が薄いとか……」
「今は後期悪阻っぽくて何も美味しくないんですよね」
急に敬語になった。後期悪阻……そんなのがあるんだ。お弁当、美味しそうだったけど。
「そうなんですね、大変……」
「あの、ごめんなさい」
急に謝られて、ポカンとしてしまう。
「年下だと思っていて、わたしの方が年下でした。1つ」
「ああ、はい」
そうなんだ。すごくどうでもいい。今さらだし。年下なんだ。いいな、いい会社に勤められて、結婚も出来て、子供も出来て……と、浮かんで来た卑屈モードの言葉たちを追い出した。
「どうでもいい、ですか?」
「え、まあ。その、気にしないで下さい」
「期間限定の仕事だから、どうでもいい。そう思ってませんか?」
言われて、サッと血の気が引いた。
「……思っていたかもしれません」
「そういうの、態度に出てるんです」
「ご、ごめんなさい」
「いいえ。私もごめんなさい。その、体がしんどいの、八つ当たりしました。それと、育休開けに、会社に居場所がなくなっていたらどうしようという不安を、あなたの態度への苛立ちと合わせてしまった……」
西野さんはもう一度頭を下げた。
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