第2話

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「……美味しくないな」 ぼそり、西野さんがそう言って、この空気に私も美味しくないけど 「あ、そうなんですか? カフェインレスって味が薄いとか……」 「今は後期悪阻っぽくて何も美味しくないんですよね」 急に敬語になった。後期悪阻……そんなのがあるんだ。お弁当、美味しそうだったけど。 「そうなんですね、大変……」 「あの、ごめんなさい」 急に謝られて、ポカンとしてしまう。 「年下だと思っていて、わたしの方が年下でした。1つ」 「ああ、はい」 そうなんだ。すごくどうでもいい。今さらだし。年下なんだ。いいな、いい会社に勤められて、結婚も出来て、子供も出来て……と、浮かんで来た卑屈モードの言葉たちを追い出した。 「どうでもいい、ですか?」 「え、まあ。その、気にしないで下さい」 「期間限定の仕事だから、どうでもいい。そう思ってませんか?」 言われて、サッと血の気が引いた。 「……思っていたかもしれません」 「そういうの、態度に出てるんです」 「ご、ごめんなさい」 「いいえ。私もごめんなさい。その、体がしんどいの、八つ当たりしました。それと、育休開けに、会社に居場所がなくなっていたらどうしようという不安を、あなたの態度への苛立ちと合わせてしまった……」 西野さんはもう一度頭を下げた。
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