第2話

5/7
前へ
/180ページ
次へ
「妊婦さんはイライラするとききますし、私も良くなかったです」 「でも、陸上(くがうえ)さんがメモ取って、ちゃんと覚えようとしてたのも知ってます。さっきの、休憩室でもすみません。居心地悪かったと思います」 「……はい。その、会話が聞こえちゃって。学歴もないし、こんな会社……本来なら縁がなかったので、その通りだと思います」 「相手をよく知らないから好き勝手言うんですよ。期間限定とはいえ、もう少しコミュニケーション取ってもいいと思います。少なくとも私はもう少し楽しく仕事がしたいです。仕事上で履歴書を見たのに、あんなところで言いふらすのはどうかと思うので、注意はしときました。それと、人事の上司にも告げ口を……しちゃった」 と、笑った。なんだ、あの後ちゃんと注意してくれたのか。 「コンプレックスですよね。みんな。大きな会社だから名だたる大学出身の人ばかりで、出身大学を未だにアイデンティティにしてる人もいて、相手に求めたり……ちょっといつまで引きずるのって感じ。結果として同じ会社員にしか到達していないのに」 私は契約社員だけど……と、ここでも卑屈がコンニチハしてしまう。 「名門大出てるから仕事が出来るのとは限りません」 「……はあ、そうですか」 ピンとこない私に 「そっか、陸上さんっておっとりしてるんだ。仕事外でもそうなんですね」 と、笑われてしまった。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1689人が本棚に入れています
本棚に追加