第2話

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私には全く関係ないが、内示が出ているらしい。組織内での異動があるらしい。 辞令が出るまでざわざわというかピリピリというかそんな空気が流れていた。 「だいたい転勤とかは3年スパンなんです。今年はキャリア組が数人帰ってくるでしょうね。それと、定年退職の押し出しで役者も変わるだろうし……私が帰ってくる頃には知らない人ばっかりなら嫌だなあ……」 「あはは! 大丈夫ですよ、今度は私がその辺り引き継ぎますから」 「……ほんと、陸上さんて人畜無害な人ですよね」 ……人畜無害?言い方!と、思ったけれど西野さんは 「安心して、健やかなお子さんをお産み下さい」 「ぶっ、お産み下さいって、まあそうします。ありがとうございます」 いいなあ。帰る場所があって。私は同時に就活もしなきゃならないな。その頃には30近くなってるのかあ。この大企業に1年勤めたこともキャリアに含まれたりしないかな……と、ほんのちょっと期待したりして……ないか。 広いフロアにはたくさんの人が働いていて、みんなスタイリッシュで気後れしてしまう。別世界って、こんなことを言うんだろうな……。 私はどん底から1センチくらい浮上した場所にいるのだろうか。 金なし、彼氏なし、期間限定の仕事あり。 私の黄金期は未だに10年前の一瞬だけ。
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