第3話

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第3話

──数週間後、西野さんは産休に入った。 最後の方はほぼ一人で業務をこなせていたし、大きな問題はないと思う。 休みに入る少し前に、休憩室で数人の社員に紹介してくれ、何となくお昼を一緒に食べる人も出来た。 期間限定の仕事ではあるけれど、精一杯頑張るつもりだった。何よりやることが多いので時間はあっという間に過ぎた。このままだときっと西野さんが復職するまでもすぐに過ぎそうだ。 常に次の就職の事が頭に過る。ネットで募集を見る限り、早ければ翌月から、遅くとも3ヶ月後程度の募集要項で1年後の求人を募集しているところはなかった。 めぼしい会社を見つけておいて、求人が出ないかチェックすることを日課にして、まずは自分のスキルアップに繋がることをしようと思った。 ビジネス英語なんて、使うことあるんだな。フロアで聞こえてくる英語対応にそんなことを思った。全く、別世界だ。 「別の電話に出ています」 「折り返します」 と、あちらの会社名を確認するのと、スペルを聞くこと、それと 「もう一度お願いします」 それくらいは対応出来るようにと、西野さんが一覧にしてパソコン下にメモを貼っておいてくれていた。 誰もいない時に海外から電話がかかってきた時に、だそうだ。 Could you say that again, please? えっと、くっじゅー? ないでしょ、この広いフロアで私だけになるなんてこと。
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