第3話

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結局、辞令は私の関与する部門にもあまり関係がなく。バタバタしたところもあったらしいが、フロアのそわそわした空気もいつの間にかおさまっていた。 一緒にお昼を取るようになっていた中ノ池さんと藤谷さんは私と同じくらいの年の比較的大人しい感じの人たちだ。 何となく一緒に食べるくらいなので、大した情報は知らなかった。 「うちの部はキャリア組が帰ってくるからザワついてた」 「……キャリア組……」 「うん、出世コースだよね。海外経験積んで役職就くのが暗黙の決まりみたいよ。一応3年なんだけど、3年後にまた他の海外行くかもしれないし、帰ってくるかもしれないし。何人かずっと海外あちこちの人もいるから、別世界だよね」 私と別世界の人が言う別世界なのだから、私から見たら異次元だろうか。と、定番の卑屈思考を頭の中で繰り広げならがら、この日もしょぼいお手製のお弁当を平らげた。 私には縁のないことだなあ。西野さんがいなくなってから、毎日言われたことだけはしっかりとこなしていた。指示された時、それが出来た時、あと朝の挨拶と帰りの挨拶。そのくらいしか喋る機会はなかった。あの中にもキャリア組とかいるのかな?見てわかる程度の情報しか、私にはわからなかった。教えてくれる人もいないし、仕事に必要なければわざわざ聞くことでもないのだから。
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