第3話

3/6
前へ
/180ページ
次へ
この日は、大きな会議があるとかで席を離している人が多い。 ぐるりとフロアを見渡す。良かった、電話を取らなきゃならないほどではなさそうだ。 もちろん、自分の前の電話は取るけれど。 指示してくれる人も少ないので、急ぎではない仕事も手をつける事が出来た。 人も少ないので、遠くの雑談まで聞こえてくる。 そうか、キャリア組も帰国してるってことかあ。どんな人かみんな気になるんだな。 “独身”か“フリー”か“イケメン”か、そんな言葉がちらちら聞こえてきていた。アグレッシブな人たちだなあ。雲の上の様な人たちで私には全然リアリティーがない。 そういえば、宏江にこの会社に一先ず勤めることが決まったと報告した時、そんな事を言われたっけ。 『良かったじゃん! そこでいい人捕まえちゃいなよ! かなり美味しい!』 って。まさか、ほとんど誰とも喋ってないなんて……心配かけるし言えなかったな。 期間限定の職場、旅の恥は掻き捨て感覚で必死に誰かを探す? そんなことが出来るほどのガッツがあるなら、こんな人生の底にはいないだろう。 恋人ってどうやったら出来るんだろうか…… 会議が終わったのか、ぽつぽつとフロアに人が戻り始めた。そのタイミングで少し休憩を取ろうかと自販機へと向かった。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1689人が本棚に入れています
本棚に追加