第1話 ひくつの渦

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この時の私は、負のループにどっぷりと入っていた。1つ起こると、2つ3つと続き、あっという間にどん底に落ちた気がする。ここまで来ると、まるで対岸の花火を見ているような気分になる。 ……あ、違う。対岸の花火じゃなくて、対岸の火事だ。 ふふ、こんなの聞いたら高台くんなら…… “違うよ、萌香。花火だとただ綺麗なだけじゃない?”って言うんだろうな…… 本当だ、対岸の花火だったら人混み避けれて、尚且つ綺麗に見られるからいいねえ…… って、妄想して笑ってる場合じゃなかった。 『不採用』 長たらしく、書いてあるメールの文章は平たく言うとそういうことだ。もう何件目だろう。正社員への道は諦めた方がいいのだろうか。何の取り柄も資格もない私では。 履歴書を書くようになって思った。書くことが何もない。新卒ならばこれでもいいのかもしれない。だけど28歳の中途採用では……あまりにもショボい。ため息をついてパソコンを閉じた。職を失って、もう3ヶ月が経とうとしていた。早くしないと家賃すらままならなくなってしまう。……引っ越しもしたというのに、何とかしなければ……。 閉じたパソコンをもう一度立ち上げると、派遣会社に登録した。目下の生活がかかってる。背に腹はかえられない。 契約社員、アルバイト、時短……選んでいる場合ではなかった。
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