第1話 ひくつの渦

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思い返せば、今までの人生、高台くんの件以外は平々凡々な生活だった。 高校卒業後は高台くんへの想いを胸に生きていた。長い長い余韻に浸っていた。 短大へと進学し、卒業後は家業型経営の小さな会社へと就職し事務職をしていた。今時珍しいお茶汲みOLみたいなポジションだった。 恋愛に関しても、さすがにいつまでも引きずってはいけないと、友人づてで出会った人と交際を始め、数年で終わった。 ごく普通に生きていた。 一つ目の負が投石されるまでは……。 そこから波紋が広がるように私の人生は普通ではなくなった。 ──── 「あのねえ、萌香のせいでもあるんだからね」 新卒の会社で知り合った宏江は容赦なくそう言った。 1つ目。宏江と共通の知り合いが開催してくれた合コンで出会った人は、真面目で目立たなかったけれど、私のことを気に入ってくれて、しばらくすると交際を始めた。隠していたわけじゃないけれど、報告が遅くなって、宏江と幹事だった子に彼と付き合うことになったと言うと、口を揃えてやめておけと言われた。その訳がよくわからなかったが……特に別れる理由もなかった。 よく漫画とかドラマとかである、彼の家にアポ無しで遊びに行ったらベッドに違う女と彼が全裸で寝ていたってやつ。あれを体験することになろうとは……。それならそうと、どうしてロックかけてないのかな……あのシーンを見る度、そう思っていた。
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