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贅沢は言ってられない。選んでもいられない。
案内されたのは、産休育休の人の代わりという約1年という期間限定の仕事だった。既に決まっていた人が急に断ったとかで……急ぎで探しているとのことだ。
例え、期間限定でも大手企業……そんな大手企業に私が勤められるとは思えない。急ぎだからこそ私でもいいのだろう。
卑屈で言っているわけではなく、本当に何も持っていない、私は。宏江の言うようにぼーっと過ごしていた。スキルアップの努力もしなかった。
定時で帰れるそうだからこの1年でスキルアップの勉強しよう。1年後にちゃんと正社員で働けるように……。
一先ずほっとした。家賃と生活費くらいは何とかなりそうだ。
それでも、これからに不安を抱かないわけではなかった。学生時代よりカツカツで情けない限りだ。
どうなっちゃうんだろう、これから……恋人もいなくなって、まともな職もなくなって。
高校時代は、 こんなことになるなんて思ってもみなかった。
受かるだろう短大に進学できてほっとして、小さな会社に就職できてほっとして、いつもそうだ。自分のレベルで生きてきた。それでいいと思っていた。
そんな努力もしてこなかった28歳の自分がどうなってるかなんて考えもしなかった。
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