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記憶は遠く
「…ここは、どこ?」
彼女はベッドの上で、そう呟いた。
そう──ここは彼女の部屋だというのに。
「サナ…」
「…サナ?私が…?」
不思議そうに、男の声を反芻するサナ。
男は悔しそうに、顔を歪める。
「ここは、どこ?わたしは…何者なの…?」
「君は、サナだ。そして私が君のお父さんのカイラ」
「お父さん…」
サナは少し黙ると、大きく息を吸ってこう言った。
「お父さん、出て行って」
「サナ?」
「お願い…1人にさせて」
「国王陛下、お客様が」
カイラは呼ばれたので、仕方なく立ち上がる。
「また、来るな」
「…好きに、すれば」
カイラが出て行った後、サナはふらつく足で窓辺に近寄った。
そして、窓とカーテンを全て閉めた。
サナは暗い表情で、再びベッドに入った。
とある国の城の、一角の部屋が閉め切られた。
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