拾って育てた弟子に襲われています。

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拾って育てた弟子に襲われています。

 子どもを拾った。  小雨の降る生暖かい夜のこと。  家路を急いで通り過ぎた道の、建物と建物の壁が作る細い隙間に何かがいたのだ。  一度急ぎ足で通り過ぎてから、立ち止まって、考えて、結局引き返してしまった。 (たしかこの辺。目が合った……)  大きな瞳の印象的な痩せた顔。警戒心を込めて行き交う人の足元を見つめていた。  声をかける義理などない。  ただ、その日ラナンはたまたま一人では持て余す量のパンを持っていた。(かまど)の修繕を引き受けたパン屋で、謝礼ついでに渡されたものだ。時間をかければ食べられないこともなかったが、この気候ではすぐに(いた)んでしまうのは目に見えていた。  つまりそれは、誰かに分け与えても、まったく困らないものだった。  雨のせいでもともと人通りは少なかったが、ラナンは扉を閉ざした店の軒先で待った。  いくらもしないうちに、見渡す範囲から人影がなくなる。頃合いと見て、先程生き物らしきものを目にした鋳物屋と道具屋の間の隙間をそっとのぞきこんだ。  強い光を放つ翡翠色の瞳に、睨みつけられる。 「大丈夫、何もしないよ。その、おなかが空いていないかと思って」  万が一、飛び掛かられても対処できるよう、距離は十分に置きながら声をかける。  魔石灯の弱い光の下、向けられた顔は薄汚れていたし、すっぽりとかぶったフードからこぼれた金髪もどことなくくすんで見えた。
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