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驚いて後退った拍子に、ドア枠にがたんと足がぶつかって男たちの注意を引いてしまう。
常夜灯にしている、灯りをしぼった魔石灯の光の下、ラナンの倍はあろうかという屈強な男が三人いるのは確認できた。
「おっと、噂の美少女か」
「よく見ろ、それは魔導士の方だ。男だぞ」
「んん~? いやしかし、ずいぶんと綺麗な肌してやがるぜ。顔もなかなか」
じゅるっと舌なめずりの音が聞こえて、全身に鳥肌が立つ感覚があった。
だけど、それより何より気にかかっていたのは、同居人二人のこと。
(この三人で全部か? 他にはいない? 僕がここで引きつけておけば、二人は逃げられるかな?)
「金目のもの、探している?」
声が震えないように気を付けながら言うと、男たちはいっせいにどっと笑った。
「それはそれで出してもらうがな。他にも探しているものはある。この家、二階があるな。そっちか?」
リビングから上へと続く階段に目を向けて、男の一人がにやにやと笑う。
「なんのことだ」
精一杯その場で踏ん張って言うと、鳥の巣みたいなもじゃもじゃの黒髪の男が、のそっと一歩踏み出してきた。
「とびっきりの美少女がいるっていうんで来たけど、オレはあんたでもいいぜ。可愛い顔してやがる」
目の前に立たれて、恐怖で足がすくんだ。いまにも膝が笑い出して立っていられなくなるのではという気がした。
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