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しかし、それを差し引いても、凛として涼やかな目鼻立ちをしたうつくしい子どもであることがわかった。
(子ども……、いや、十四、五歳くらい? 綺麗な女の子……だよね?)
長い睫毛、通った鼻梁、形の良い唇。そのどれもが甘さと凛々しさの奇跡的なバランスで、男とも女とも判じ難いうつくしさである。
「事情に立ち入るつもりはないんだけど。僕、今たくさんパンを持っていて。お腹空いていたらどうぞ。えーと……ここに置いて、すぐにいなくなる」
自分から声をかけた割に、おどおどとしてしまって情けないのだが、それだけ少女の眼光は鋭かったのだ。
「それ、変なもの入ってない?」
硬質に澄んだ声は、研ぎ澄まされた刃物の切れ味を思わせた。
「へ、変なもの……?」
「食べたら眠くなるようなものとか」
「そんなことはないと思う! 通り向こうのパン屋さんで焼き立てをもらってきたんだ。普通にお店で売っているもので……」
瞬きもせずに、見て来る。
正直、射殺されるかと。
「食べるかどうかは君に任せる。僕には少し多いから。それに、すぐいなくなるから、食べて寝てしまっても、手を出したりなんかしない」
少女は無言のまま、何かを抱きかかえて立ち上がり、隙間から通りへと出て来た。
腕の中にいたのは、少女よりも一回りも二回りも小さな子どもだった。
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