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服の上から常に魔導士のローブを羽織っているラナンは、体の線を見せることはないが、はだけたフードからのぞく顔は小さく顎は細い。全体に華奢な印象で、たいていの男性より背が低く、後ろ姿などどうかすると子どものようにも見える。
「あんたが仕事を始めた頃は、正直大丈夫かと思っていたが……。さすがに腕は確かだし、うちの娘たちもあんたが来るって言うと喜んでいたんだが……」
世間話を始めた主人に対し、ラナンの後ろに控えた背の高い美少女が、鋭い目つきをわずかに和らげてにこりと微笑んだ。
「お師匠様。次の予定まで時間がありませんよ」
完璧な笑みを浮かべたまま、腰からわずかに身をかがめてラナンの耳元で言う。
「あ、うん。そうだね。それでは、今日はこの辺で」
まだ話し足り無さそうな主人に別れを告げて、ラナンは自分の身長を越えてしまった少女を見上げて「行こう」と笑いかける。
「おじさま、またね!」
二人にまとわりつくように跳ねまわっていたいまひとりの少女が、愛嬌いっぱいの挨拶をしてぶんぶん手を振ってから背を向けた。
去っていく三人組の後ろ姿が、通りの人混みに紛れて見えなくなっても、主人は長いことその場に立ち尽くして見送ってしまった。
ジュリアとロザリアの美人姉妹を拾ってから二年が過ぎようとしていた。
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