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家に二人を置いておくこともできず、仕事先に連れ歩くようになったのはある意味避けられない流れだった。
ラナンが依頼を受けるのは、一般家庭や家族経営の小さな店が主なので、少女たちを連れ歩いて危険な場所ではないのが幸いした。
あの雨の夜から幾日かたった頃。
ロザリアの熱が下がらず、やむを得ず家に置いているうちに、姉のジュリアにはすっかり見抜かれてしまったらしいのだ。
この男は危険ではない、と。
『私は自分たちの容姿にどの程度の価値があるかは理解している。行く場所がないとはいえ、受け入れてくれる場所があるのも知っている。行きたくはないけれど、出て行けと言われたらそうする。私としては、判断力のある自分はともかく、妹は巻き込みたくないと思っている。だけど、体を売る場所に行って、この子には手を出さないで欲しい、というのはまず無理だろう』
自分の価値を知っている。
そんなことをさらりと口にするジュリアに、ラナンは言葉もなく圧倒されてしまっていた。
(絶対、訳ありの訳は、すっごい「訳」だよね……。ただものじゃなさすぎるよね……!)
市井の魔導士である自分には、おそらくどうにもできない事情を秘めているに違いない。
戸惑うラナンに対し、ジュリアは寝台に横たわったロザリアがよく寝ていることを確認し、言ったのだ。
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