拾って育てた弟子に襲われています。

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『いくら美人でも、君はまだ子どもだからね……。僕だってそこまで落ちぶれちゃいない』  そこで、なんとなく話がついてしまったのだ。  古びてはいても居心地の良い家に住み着いた二人は、何かと家の中の仕事は覚えて手伝おうとしてくれるし、姉のジュリアに至ってはラナンを「お師匠様」と呼んで、仕事先でも助手のように振舞っている。頼みこまれたので、少しずつ魔法を教えてもいた。  しかし、それまで浮いた噂の一つもなければ、実際恋人もいたためしのないラナンのこと、当然のように、行く先々でちょっとした騒ぎになったし冷やかされた。   金糸のような髪を長く伸ばしたジュリアはすらりと細身で背が高く、当初は十四歳でラナンとほぼ変わらない身長だったのに、半年から一年で追い越されてしまった。十六歳になろうという現在、その中性的な美貌はすれ違う者の足を止めさせるほどに際立っている。  一方、癖のある蜜色の髪のロザリアは、きらきらと輝くエメラルドの瞳にばら色の頬でいつも愛くるしく笑っている。八歳という、絶妙にあどけなさを備えた年齢のせいもあり、見る者をどんどん虜にしてしまう凶悪なまでの可憐さだった。  そんな二人を、魔導士のローブに埋もれるほど小柄で貧相で冴えない男のラナンが連れ歩ているのである。  冷かしてくる相手はまだマシなくらいで、じっと昏い瞳で窺ってくる相手はおおいに警戒せざるを得ない。
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