174人が本棚に入れています
本棚に追加
(いろんな意味で良くないのは僕もわかっているんだよね……。二人は綺麗すぎるし、年頃だ。縁もゆかりもない男と暮らしているというのは外聞も悪い。とはいえ、行く場所はないって言うし、素性も教えてくれないし。どうしたものか)
誰か信頼できる相手に預けるのが一番だよな……と考えて、思い浮かぶのは一つ。
生家。
女傑と言われる母が取り仕切っており、家業も順調で、家族以外にも多くの徒弟が一緒に暮らしている。中には女性もいるし、仕事を覚えながら生活するにはうってつけの場所だ。
いずれ話を通してみるのもいいかもしれない。
そう思いながらも、二年近く踏ん切りがつかないのは、二人の素性がよくわからないせいだ。
詮索する気はないが、訳ありの訳がおおごとだった場合、実家に面倒事を持ち込むことになる。それはラナンとしても本意ではない。
独り立ちすると決めて、家を離れたのはラナン自身の決断だった。今さら迷惑はかけたくない。
悩みながらずるずると来てしまった。
いつか。
そんな悠長なことを言っている場合ではないと気付いたのは、ある夜のこと。
皆が寝静まった深夜。
妙な胸騒ぎがして起きたラナンは、寝台横の椅子にひっかけていた魔導士のローブを夜着の上からかぶって、共有空間であるリビングへと足を向けた。
そこに、見慣れない男が数人入り込んでいることに気付いて息を呑んだ。
(泥棒……!?)
最初のコメントを投稿しよう!