大学

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「次は……何だっけ?」 『次は皮と裏の部分に塩胡椒をします。』  チキンソテーを作るといっても思ったより簡単じゃなかった。脂を除いて、スジにも包丁を入れて。包丁の先が左手の人差し指の先を掠めて血が滲んできたけど、それどころじゃない。 「塩胡椒か……。味付き塩胡椒ってのがたぶんあったよな?」 『ハーブソルトを使ってみては? 以前田中が作ったものを美味しいと仰っていました。』 「田中?」 『2番目のハウスキーパーです。』  調味料入れの引き出しからハープソルトを探し出して肉に振る。だいたいこんなもんだろ。 『15分ほど寝かせて味を染み込ませます。』 「はーー、疲れた。けど、なかなかイケるだろ?」 『とてもお上手です。』  愼の言葉に満足してリビングに行き、真っ白なソファに沈み込んだ。食事の支度はまあまあ大丈夫そうだ。愼がネットを通じて色々とアドバイスをくれる。問題は買い物。 「なぁ、食材ってスーパーでしか買えないの?」 『と、いうと?』 「いや、配達とかってしてもらえたらいいなって。」 『今はどこのスーパーでも配達サービスをしています。1回につき配達料がかかりますが。』  人の言葉に反射的に体を起こす。何それ? 最高じゃん。 「ならさっ、食材は配達してもらおうよ。ネットから……できる?」 『大丈夫です。』 「良かったあ。」  スーパーでの買い物は経験あるけど、毎回食材を選ぶなんて絶対に続かないに違いない。ホッと一安心して、愼と毎日相談しながら食材を届けてもらうことに決めた。 「じゃ、愼、頼むな。」 『お任せください。いってらっしゃいませ。』  玄関で靴を履きながら愼に挨拶をする。食材の配達はマンションのコンシェルジュに預かってもらうことに決まった。毎朝、愼とスーパーのチラシをネットで見ながら買うものを決める。お菓子やジュースなんかも頼めるからありがたい。  耳にイヤホンをして、スマホに落とした90年代の音楽をランダムに流す。選ぶのは愼だ。時々いいものがあると曲名を聞いたりするけど、独り言を呟く怪しい者にならないように、極力我慢をしている。外で愼から話しかけられたことは、まだ一度もない。  駅まで10分程度。2つの曲を聴き終わる頃には駅に着く。今日は駅に知り合いがいた。 「優樹!」 「米田さん。」  いつの間にか仲良くなった1つ上の先輩。最初は学食で相席したのがきっかけだった。周りはいつも(あの)王高寺くんと呼ぶ中で、唯一名前で呼んでくる先輩。今日はラッキーデーだ。 「今日は2時間目から?」 「ええ、米田さんも?」 「ああ、一緒に行こうぜ。」  イヤホンを耳から外して、思わず笑顔になる。嬉しい。それから米田さんのバイトの話や、最近観た映画の話なんかをしながら、楽しい時間が過ぎていった。    
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