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プロローグ
「Hi How are you?」
私は朝起きたらすぐに、6人ほどの外国人にあいさつする。
といっても、リアルではなくて、メッセージアプリで、だ。
相手は全員、国際交流サイトやアプリで、連絡先を交換した外国人である。
英語が幾分かできる私は、彼らと日がな一日チャットで暇をつぶしていた。
私が何歳で、職業は何か?
そんなことは聞かないでほしいけれど、仕方ない。
私は24歳、無職の日野さくら。
バイトをしては、あまりのコミュ力の低さによってクビになり、現在に至る。
誰かと話そうと思っても何も話せないくらい緊張して、頭の中が真っ白になって。失敗を繰り返してきた。
でも、チャットならすらすら話すことができる。不思議だ。
20〷年頃にはチャットだけでできる仕事ができてたらいいのに、なんて夢を描きながら、私は今日も国際交流サイトを開くのである。
「あれ?新着1件?」
受信したメッセージには、ただ「Hi beautiful」とだけ書かれていた。
「よくあるナンパ系メッセージか……」
一応、送信者の顔でも拝見、とプロフィールアイコンをタップする。
すると、画面いっぱいに広がった画像には―――――
輝かしい金髪碧眼の、まごうことなきイケメンが映っていた。
名前はLeo(レオ)。
「いや。さすがにモデルの写真の盗用でしょ」
鼻で笑っていると、そのイケメンから次々とメッセージが送られてくる。
「メッセージ読んでくれてありがとう」
「君の写真は本当に美しい」
「君みたいな美しい女性と話せたらどんなに幸せだろう」
いやいやいや、イケメン(仮)なのに、いくらなんでも必死すぎるだろう。
「なんでそんなに必死なんですか?笑」
メッセージ(やや煽り気味)を試しに送ってみる。
すると、間髪入れずに
「OOOOOH 私の女神がメッセージを!!ありがとう!!なんで必死か?それは君に一目ぼれしたからだよ……君のすべてが美しい、世界の奇跡」
予想をはるかに超えた暑苦しすぎるメッセージに、
「ふふっ、何この人、イケメンのふりする気ないでしょ」
と、うかつにも中の人、レオに興味を持ってしまったのであった。
このことが、半年後、私を日本一の有名人にしてしまうなんて。
まだ、ベッドの上で転がっている私も、世界中の誰も知らないことである。
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