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はじまりはじまり
魔王城では、魔王の親族の結婚式が挙げられていた。
「えー、魔王様の弟御様と人間の女性、ご結婚おめでとうございます。二人はこれからも長い道のりを支え合って...」
デビルが神父みたいな言葉をいっている後ろで、巨体の魔王は男泣きを通り越して号泣していた。
「ぐっ、ぐっ!弟よ!もうそんな年に!アアアアハアアアア!!!」
「あの、魔王様。少しお静かに、まあいいや。永遠の愛を誓いますか?」
デビルは台詞を省略した。二人は誓いますと答えた。
「それでは誓いの血の盃を」
魔王の弟は手首を小刀で切り、人間の女性は親指の腹を少し切った。それで出てきた血を盃に入れると、交互に一口ずつ飲んでいき、誓いの血の盃は終わった。
「そんじゃああとはパーティーですね」
デビルが指をパチンとならすと、魔王城がとても豪華なパーティー会場に様変わりした。
「それでは皆様、お楽しみください」
あとはまあどんちゃん騒ぎだ。人間も魔物も関係なく、歌って踊って食って飲んで。
-数年後-
「はあ、弟家族は大丈夫だろうか」
魔王は大きな椅子の肘掛けに体を預け、横たわっていた。
「全く、魔王様数年前からそれしか言ってないですね」
「ああ、特に甥のことが心配だ!ちゃんとミルク飲んでるだろうか、夜泣きはしてるのか?熱など出していないだろうか...」
「はぁ、魔王様、甥御様はもう17才です」
「はっ、そうだった!もう高校生になるんじゃないか!それに今日が入学してから初めての授業だ!おいデビル!キルズの様子を確認してこい!そしてキルズに仕えろ!なにかあったら報告しにくるのだ!」
デビルははあ、とため息をつき、魔界から人間界に向かった。
-ハニヤスエルマスキシェルステント高等学校-
「えー、それでは、一年生最初の授業である、使い魔召喚をします」
使い魔召喚か、そんなに強くなくてもいいんだがな。
「いいですか?使い魔はこれからあなたたちと一緒に学園生活を送る友のようなものです。しっかりと召喚しなければなりませんよ」
それでは始めましょうと、教師はすこし後ろに下がった。教師が呪文を唱えると、生徒達の前に一つの魔方陣が現れた。生徒達は一列にならび、順に使い魔召喚をしていった。
ゴブリンが出てくる奴もいれば、小型のドラゴンを出すやつもいた。そこは才能に寄るようだ。
俺の番が来た。そんなに目立ちたくないな。呪文を唱えると、他の生徒達とはなにか違うオーラが周囲に渦巻いた。魔方陣から出てきたのは、数年間俺の子守りをしていたデビルだった。
「な、なんということでしょう...キルズさん下がって!私が退治致します!」
教師は呪文を唱えて悪魔系の魔物に有効な光の魔法をデビルにぶつけた。しかしデビルはそんな魔法で傷つくようなやわな肉体をしていない。手で払えばそんな魔法すぐに消せる。
「まあ、すぐに兵を呼ばなければ!」
賢いデビルはすべてを見抜き、俺に向かって膝をついた。
「あなたにお仕え致します、キルズ様」
生徒や教師は目を丸くしていた。それはそうだ。デビルが仕えるのは魔王だけ。それ以外の魔物や人間は必要に応じて排除するのだから。
「えと、まあ忠誠を誓うのならいいでしょう。次の生徒!」
召喚の授業は問題なく進められた。だが俺は、教師や生徒から変な目で見られるようになった。
寮に戻ると、俺はデビルに質問攻めをした。
「なんでここに来た!どうして召喚の魔方陣から出てきた!勝手に来たのか!」
自分の身長ほどある、といってもそれは猫背の時の身長だが、デビルはすん、とした顔で答えた。
「魔王様にキルズに仕えてこいと言われました。なぜ魔方陣から出てきたのかは、そこが一番テレポートしやすかったからです。あとちゃんと魔界のゲートを潜って通行料払ってからテレポートしました。ということでこれからよろしくお願い致します、キルズ様」
はあ、目立ちたくないという俺の願望は叶いそうにない。
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