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黒のローブから見える世界はこれで二度目だ。
外敵から身を守るこの布には、防御魔法が編み込まれており、ちょっとやそっとの風が来たくらいでは体から離れないようになっている。
誰から身を守るか。以前はハスから。今回は人からだ。
それはつまり、私はこの世界から追放されていることを意味するのだ。
住んでいた環境が破壊されるのも二度目。
でも、今回はちょっとばかし違うのである。
「ロム、改めてすまない。謝るよ。俺がもっと立ち回ってさえいれば、こんなことには……」
彼の手には三枚の手配書。
私と彼とアカリちゃんのだ。事情はエネックさんから聞いている。仕方のないことだとね。
でも、少しは抵抗して欲しかったな。この手配書、絵が上手すぎて顔を見られたら一発でばれるじゃないか。
「なーに言ってるの。君のせいじゃないぞ」
本当、悪者は一体誰なのだろう。
ハス? うん、やっぱりハスだ。
でも、そのハスを生み出したのは……私の家族や、大切な故郷を奪ったのは……。
「向こうに着けばアカリやラピ、レプスもいる。それで皆で考えよう。これからどうしていくかってさ」
もし本当にあの王様の言うことが正しいとしたら。
彼は、彼自身はどうするのだろう。
「ラピちゃんとレプスさんもいるのね! よく遭遇するなぁ~」
ハスを倒して欲しい。
もしかしたら、エネックさんもその事を知っていての願いだったのかもしれない。
だって、人類最高の兵器が効かなかったんだ。
それなら、人類最強の戦士に頼る以外道はないじゃないか。
希望は失ってなんかいない。
「ロムはどうしたい?」
「私? 私はー……」
生きるのに必死だった分、こうも時間が空くと何をすれば良いか分からなくなる。
だから、気になった事ややらなきゃならない事を探す必要があるのだ。
でも答えは出ている。
彼女が出していたじゃないか。私の道標を。
「私は、ハスを倒したい」
土台、自分には無理な話しだ。
力も無い、特技も無いただの一般人。
でも、手助けは出来る。支える事は出来る。
彼の顔が一瞬硬直したが、次第に目を伏せ、口を開いた。
「それは……俺の役目だよ。俺が任されたんだ」
彼の反応に違和感を感じた。
いつもなら口角を上げ、やれやれだの仕方ないだの反応を見せる筈だ。
「どうしたの? 疲れてる?」
「う……ん、色々あったからな。少し疲れた。飛空艇の中で眠らせてもらうよ」
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