22人が本棚に入れています
本棚に追加
代わる代わる現れる面会人は、全く知らない人間ばかり。むしろ、日本人ですらない。
そして、思うように動かない身体と言葉を紡げない口は、交通事故の後遺症ではないみたいだ。
俺は徐々に自分の置かれた状況を理解した。
これ、赤ん坊になっていないか?!と。
「あぅ……っ」
おてては、紅葉のように小さくてプニプニしているし、「あぅ」とか「きゃぁ」とかしか喋れないし。完全に赤ん坊だ。
辛うじて、面会に来ている人間の言葉は理解出来るので、頭までは幼児化はしていないのが救いである。
「リデルライト様」
リデルライト。それが俺の名前らしい。
「まるで天使のようにお美しいお顔ですわ」
そう言って俺の額にキスをした妙齢の女性は、修道女のような格好をしている。青い華麗な瞳でかなりの美人だ。
最初は、彼女が自分の母親なのかと思ったがそうではないらしい。
じゃあ、ベビーシッターかと言われれば、それでもないように思える。
「きっと元気に生きてくださいね?」
「あぃ?」
妙な事を言われて俺は首をかしげた。
まさか、実は父親がメイドに手を出して産まれた子供が俺だとかそういうドロドロした話なら勘弁して欲しい。
「あぅぅ〜…」
「死なないでください、リデルライト様」
不穏な言葉を残して、彼女はそのまま部屋を出て行ってしまった。
死なないでって……俺病気なのか?!
「あ、あぃあぅあーーーっ!」
最初のコメントを投稿しよう!