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2話 3歳になりました
「おとうさま、いってらっちゃい」
俺が有名な騎士の家系であるルーンミナス家の次男坊リデルライトになって3年が経った。
言葉もだいぶ流暢に話せるようになり、字も少しだが書ける。
まだ、剣を振るうことはないが、父はもうそろそろ俺に修行をつけたいそうだ。
「行ってくる、良い子にしているんだぞ?」
「はい」
「ヴェインもな?」
「はい、父上」
ヴェインと呼ばれた俺の兄は、背筋をピンと伸ばして力強く頷いた。
彼は俺よりも5つ年上で、剣の修行も始めている。8歳にしては、落ち着いた言動と意志の強そうな目は父親譲りだ。
でも笑うと太陽のえくぼが出来て、優しげに細められるタレ目がまた可愛らしい。
つまり、自慢の兄である。
「隊長!」
「あぁ、すまん!」
急かす副隊長の声に父が大声で答えた。
別れ際に短く切り揃えられた金髪をガシガシと撫でられ、俺は痛いと顔をしかめた。
「いちゃいっ」
「おー悪い! つい、いつもの調子でやってしまった。それじゃあ、行ってくる!」
「行ってらっしゃいませ、あなた」
「行ってらっしゃい、父上」
「いってらっちゃい」
バタバタと慌てて馬に跨って走っていく父の背中を見送り、俺達は家のなかに入った。
しかし、あの慌てよう……父は副隊長さんがよほど恐いらしい。
「にぃさま、いつものちょうしって?」
父は、無骨な人ではあるが俺にはすこぶる甘く、まるでガラス細工を扱う様に優しく撫でてくれる。なので、今日はいつもと違ったので不思議だった。
「ん?あぁ、父上は犬を使役しているからな」
「いぬ?」
うちには犬なんていないし、軍用犬か?
「僕は欲しくないけど、騎士の殆どは犬を使役するんだそうだ」
「わぁ」
いいなぁ、ペットかぁ…。可愛いよな。
モフモフは癒しだ。昔飼っていた犬のノエルの額の匂いを嗅ぐのが俺の日課だった。
あれの誘惑はすごい、またモフりたい。くんかくんかしたい。
「どうした?もしかして、欲しいのか?」
「えっ?」
よっぽど物欲しそうな顔をしていたんだろう。ヴェインが俺に飼いたいかと尋ねてきた。
まぁ、ちょっと……いや、かなり飼いたい!
「うん!ほしいっ」
「物好きだな。でもまぁ、今度父上にお願いしてみるよ。リデルのお願いだしな」
「ありがと! にぃさま!」
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