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願い事のひとつも
この世界に生まれた理由を聞かれても、今さらだ。
腹を逆流して来た本音をやっとの思いで呑み込んだというのに目の前の存在は俺に語りかけてくる。
俺の目の前に鎮座して、姿形を秒単位で変えていく光は、俗に神様だと言われている。
神様依存という特効薬のない病が流行りだしたのは、三年前のこと。
最初は精神疾患として捉えられていたが、病の患者が増えるに従ってそれなりの情報が集まった。
神様依存は、自分が作りだした神様に願いをし続ける病気だ。
初期は、単純に神様否定から入る。それだけなので発症に気が付かない。こう言ってはなんだが宗教に興味を持っていなければだいたい否定する。このどこが異常かといえば、宗教を切り盛りしている信仰者が、神様を否定するところだ。考えてもみてほしい。最初から否定している人間が否定している分には異常さはないが、今まで神様、神様になりうる存在を信じていた人々がこぞって神様を否定し始めたのだ。
人によっては、やっと目を覚ましたかと言う輩も居るだろうが、俺はその話を聞いたとき無気味だと感じた。
全員が嫌うゴキブリをなんの拍子かは知らないけれど、ゴキブリ大好き。と言いながら、持ち歩いていたら。世の中にはゴキブリストラップだの、ゴキブリの育成セットだのが溢れてマスコット化され陳列されていたら。そのなかで俺だけがマトモな思考を持ち合わせていたりしたならば。そう考えた時点で震えが、吐き気が沸き上がってくる。
そんな症状がでたあと、半日足らずで神様依存は加速していく。
なんてことはない。
自分だけが見えている物体に、願いを掛けては、それが成功したと思い込んで生活していく。
最も異常性のある行動は、願いが叶った前提で願い事を実現させようと行動してしまう点だ。
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