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 そんな日々を過ごしていたある土曜日、珍しく海斗さんが朝からベッドを抜け出した。 「海斗さん?」 「愛莉か。今から出かけるから泊まる支度して。」 「はいっ。」  出かけるって誘ってくれた事が嬉しくて、急いでクリーム色のカットソーに茶色のフレアースカートに着替えて、化粧ポーチや着替えを詰め込んだバッグを手にした。 「愛莉、ちょっと遠出するから早く乗れ。」  助手席に乗り、後部座席にバッグを置いてシートベルトを留めると車は、静かに走り出す。  あの隠れ家レストランに行ってから、1ヶ月ぶりのお出かけに、私は嬉しくなった。  ちゃんとデートが出来る普通の恋人と言う状況に声も弾む。 「海斗さん、どこへいくんですか?」 「長野。宿は決めてないから適当だけど。」  一緒にいて海斗さんが、結構行き当たりばったりな事を知った。  綿密に計画たてるタイプだと思っていたから驚いたのだが、せっかく楽しみにしていても周りの大人の都合でいいように変えられる事が多かったせいで、楽しみにしていて諦めるより、最初から期待しないで、その時々を楽しむようになったと教えてくれた。 「愛莉は、温泉と観光どっちがいい?」 「温泉かな。」 「じゃあ部屋付き露天風呂のある温泉旅館をネットで探して。 そこを目的地にするから。」 「部屋付き露天風呂じゃなくても…」 「愛莉と一緒に入りたいんだよ。」  そう言って笑う海斗さんに私は弱い。 「車で4時間くらいかかりますけど。ありました。」 「じゃあ、愛莉の名前で予約入れといて、ナビも頼む。」  移動中は、楽しく学生時代の話や仕事の話をしていた。  
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