1927人が本棚に入れています
本棚に追加
惨めな自分を奮い立たせて、海斗さんに初めて自分から電話をした。
出ないと思っていたが、ちゃんと出た事に少し驚いた。
「はい、市ヶ谷です。」
「海斗さん?愛莉です。」
「今、都合が悪いので、後ほどご連絡致します。」
仕事のような話し方だったが、近くで女性の「海斗?」って可愛い声がしていた。
あれからずっと婚約者さんと一緒なんだと涙が溢れて、ベッドに突っ伏して泣いた。
物音に気づき意識が浮上する。
泣きながら眠ってしまったらしい私を起こしたのは、玄関の鍵を開ける音だった。
「愛莉、遅くなって悪い。急に電話なんてしてきて、どうしたんだよ。」
物音の正体は、何回か電話したらしいが、私が出ないのでアパートまで来た海斗さんだった。
合鍵を渡すんじゃなかった。
「海斗さん、私と別れてください。」
「はぁ?なんで。」
私から別れ話をするとは思っていなかったらしい。
「海斗さんには、婚約者がいるんですよね。」
「な、なんで、それを」
「私、こんな中途半端な関係は、嫌です。だから別れてください。」
「俺はお前を手放すつもりはない。」
そう言って海斗さんは、私をそのまま押し倒して、乱暴に抱いた。
最初は抵抗したが、身体は海斗さんを覚えきっていて、簡単に受け入れてしまう。
いままでの優しい海斗さんとの時間が嘘のように荒々しく執拗に抱かれ、避妊していなかったことに気づいたのは、明け方に海斗さんが帰った後だった。
最初のコメントを投稿しよう!