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このままだと私は、本当にダメになってしまうと思い、仕事を辞めて海斗さんの前から去ろうと決意した。
副社長に一ヒラ社員の退職願いが、回ることはないだろうが、最短で辞められるように体調不良を理由にして、退職日までは、数人の上司だけにしか話さないでおいた。
相変わらずたまにふらっとやってくる海斗さんには、「別れるのはやめた」と笑って誤魔化し、今まで通りの生活を送っているように振りをした。
海斗さんは、私を手放す気はないが、婚約解消する予定もないらしい。
「どうにかするから愛莉は、そのまま俺の女でいればいい。」
そう言って笑うのを見て、冷静になった。
私に愛人になれと?冗談じゃない。
アパートの荷物も家具家電付きの部屋だったから、わからない程度に少しずつ片付けていたが、新しい部屋を探し始めた頃に本当に体調が悪くなり、貧血や吐き気がひどくなっていった。
まさか?
確かに生理が来ていない。
絶望的な気分のまま、薬局で妊娠検査薬を買って調べてみると妊娠していた。
私は海斗さんとしかしていない。おそらくあの日の…
あの日が嘘のように、あれからはちゃんと避妊してくれていたから間違いないだろう。
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