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大学を卒業したら、一流企業に就職して、恋とおしゃれと女子会にと充実したOLになるんだ。
と思っていたんだけど…
高校卒業後、東京の青蘭女子大に進学し、国際関係学部を卒業して、女子に人気の食品メーカー グランツに就職した私、橘愛莉(たちばなあいり)は、企画部販売促進課に配属にされた。
研修で仲良くなれたと思った同期は、バラバラに各地へと散り、身分不相応なお嬢様大学の同級生たちは、卒業後、縁遠くなり、結局のところ女子会をするような友人はいない。
恋に関しても、仕事が忙しくアパートと仕事場の往復しかしていない愛莉には、会社以外に機会もなく、同僚は既婚者か彼女持ちで、こちらも相手がいない。
仕事だけは上司や先輩のアシスタント業務を行うことで、少しずつやれることが増え、企画を任されるようになったのが、唯一2年間の成果と言えた。
そして、3年目の春。
とある金曜日の午後、私は市ヶ谷海斗と出会ったのだった。
「すみません。販促の橘さんいらっしゃいますか?」
ある日の昼下がり、私を訪ねて来たのは、ワイシャツの上に白衣を羽織って黒縁のボストン型メガネをつけた人だ。
サラサラの髪が目にかかって、ちょっと煩そうにかきあげているイケメンを見て、私は会った事があった?担当、この人だったっけ?と首を傾げた。
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