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「愛莉だろ?」
「海斗さ…ん」
他人の振りが出来ずについ名前を呼んでしまうと彼に私だとバレてしまい、そのまま抱きすくめられる。
「どうして黙っていなくなった?」
絞り出すような掠れた声に鍵をかけきれていなかった思いが溢れてくる。
「急に会社辞めて、アパートも引き払って…
別れたいって言ってたよな。俺から逃げたのか?」
私は、必死に心を落ち着かせて、もうなんとも思っていない振りをする。
「もう過去のことです。市ヶ谷副社長は、こちらへはお仕事で?」
「あ、あぁ。金曜日からのお城公園の夏祭りで、飲食ブースにうちのカフェが、出店するからその打ち合わせだ。」
よりによって私の担当業務⁈
明日からの打ち合わせに海斗さんが、参加するってことなの?
「副社長みずから打ち合わせに参加するんですか。」
「グランツの商品に親しむきっかけ作りのGカフェは、俺の企画事業だからな。
それに静岡に出張したおかげで、愛莉を見つけられるなんて、ついてるな。」
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