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「婚約者さんと結婚されたんですよね、おめでとうございます。」 「愛莉、俺は離婚したんだ…」  海斗さんが結婚したのは、6月だから、まだ1年しか経っていないはず。 「幼なじみだし会社同士のつながりもあって、結婚したけど、うまくいかなかったんだ… 愛莉がいれば、よかったんだけど。 お前こそ、結婚したのか?」  海斗さんは私の左手を見て厳しい表情をしている。  でも私がいたら良かったなんて、酷い。  ホントの事を話す気にもなれず、曖昧な顔をしているとスマホが震えた。  名前を見ると麻子さんなので、海斗さんから身体を離しつつ、電話に出る。 「はい、愛莉です。」 「愛莉?まなちゃんが、ぐずっているんだけど、帰って来れそう?」 「うん。いま静岡駅からバスに乗るからもうちょっとかな。」 「じゃあ待ってる。」  電話を切って海斗さんを見るとさらに不機嫌な顔をしている。 「旦那か?」 「ごめんなさい。急ぐから。」  海斗さんを振り切り、ちょうど来たバスに乗り込んだ。 「お、おい。愛莉!」  手を掴み損ねた海斗さんを残してバスは発車した。  海斗さんは、また私を逃したと思っているだろうけれど、今週末のイベントの準備で、どこかで必ず会うから気が重い。  でも、とりあえず愛斗が心配で家へ急ぎ帰ることにした。  
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