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 終業後、制服から通勤着に着替えてエントランスに行くといつから待っていたのか部長がスマホを弄りながら来客用ソファーに座っていて、私に気付くと手を挙げた。 「橘さん、お疲れ様。」 「あ、あの市ヶ谷部長、こんなところで待っていたら、目立ちます。」 「そうか?」  私は席に戻ってから、周りの先輩方に市ヶ谷部長の事を聞いてみた。  確かに社長の一人息子で、30歳。 今は部長だけど、数年以内に副社長として社長と共に会社を率いる事になるため、商品開発部のような場所では煙たがられるが、総務や営業の女子社員の中では、イケメン御曹司として優良物件だと人気があるらしい。  そんな人と一緒にいたら、お姉様方に何をされるか… 恐ろしくて考えたくない。 「私、先に出ていますから、お店を教えてください。」 「それじゃ、5分後に地下の駐車場に来てくれる?車で待っているから。」  そう言って立ち上がると、そのままエレベーターの方へ部長は戻って行った。  私は、そこから外へ出てスロープから地下駐車場へと降りていく。  駐車場の中でキョロキョロすると出口から5台目のスペースに「スリーポインテッド・スター」のエンブレムが付いた白のドイツ車が停まっていた。  窓ガラスが開けられて部長が、手招きをした。 「橘さん、乗って。」  私が乗ってシートベルトを締めた事を確認すると部長は、車を静かにスタートさせた。
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