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その仕草は、若々しくて、純粋で。
どういった気持ちを抱いているのか、鈍い俺でも手に取るようにわかる姿だった。
「……え……」
まさか、ちょっと待て。
思わずフリーズしてしまったが、これ、お誘いじゃね?
いわゆる、デート的な。
ほら、よく見たらほっぺ赤いし。
ていうかこの人マジで綺麗じゃね?
「……ぜ、じぇ、是非!」
ああ畜生めっちゃどもっちまった。
クッソかっこわりぃ。
「よかったぁ」
ああああなんだよくそ、笑った顔、めっちゃ可愛いじゃねぇか。
なんだよこれ、まさか神様、爆発させる代わりに俺に出会いをくれたのか?
まさかあのハチが神様か?
マジかよ。
こんなもんくれんだったら100円じゃ足りねぇじゃねぇか。
「……次は、札入れよ」
「え?」
「いや、こっちの話」
誤魔化して笑いながら、俺は今この瞬間の幸せを噛みしめる。
そういえば、憂鬱だった思いがどこにもない。
ああ、これが、憂鬱が消えるって感覚かな。いいなこれ、最高じゃねぇか。
――なんだ、この世も、捨てたもんじゃねぇな
サンキュ、神様
割とダメもとでも神様にお願いしてみるもんだ、と俺は数年後妻になる彼女との会話に花を咲かせた。
fin
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