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私はずっと、特別な存在になりたかった。
「しほちゃんはすごいね!男の子よりも足がはやくて」
「ほんとほんと!いっつも一位だもんね!」
「そうかな?たまたまだよ」
そう言いつつも小学生の頃の私は、学年で一番足が速い事に優越を感じていた。
皆が私を凄いと言ってくれる。羨ましいと言ってくれる。まるで自分が特別な存在で、漫画の主人公にでもなった気分だった。
きっと大人になればもっと足が速くなって、将来は陸上選手にでもなって、私はテレビに出るような有名人になるんだ!と……そんな勝手な妄想を夢見ていた。
「はぁ……はぁ……」
中学に上がると、私より足の速い同級生なんて何人もいた。男子にも、勿論女子にも。
どれだけ走っても走っても、前を走る人達には追い付けなかった。
「あきらめちゃ……駄目だ」
陸上選手だって皆毎日努力している。だから私も、皆に負けないように毎日走って努力すれば、きっとまた一位を取れると信じて頑張った。
しかし結果は、どうあがいでも変わらなかった。
「私って……特別足が早かったわけじゃないんだ」
この足ではきっともう主人公になれないと悟った私は、走ることを止めた。
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