私は、ただの少女Ⅾ

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「結局あれから、一度も賞も取れなかった」 後輩はほとんどの子が賞を取っているというのに。先輩の私だけは、あれから一度も……。 「駄目だ。ここでも私は、主人公にはなれない」 中学を卒業して高校生になった私は、美術部には入らなかった。 「私って、何の才能があるんだろう……」 なにをしてもうまくいかない。部活も、なにをすればいいのか全然分からない。 でも折角の高校生活。何か成し遂げたい。結果を残したい。輝きたい。 「ねぇしほ。よかったら私と文芸部に入らない?」 「文芸部?」 高校に入って最初にできた友達の優花(ゆうか)に誘われたのは、小説や詩を書いて部誌を作る文芸部と言うものだった。 美術部の時とは違って、絵ではなく文章だけで作品を作る。 本は好きだが、実際自分で書いて作るのは初めての事で、なかなか慣れるのに時間がかかった。 けど文字を連ねるごとに、自分が感じた、自分が想像した、自分だけの物語を作ることが出来て、しかもそれを誰かが見てくれる。その事にとても感動を覚えた。 その感動は、走って一番を取れた時や絵で賞を取れた時とは違う。 書くだけで楽しくて、自分で印刷して不格好な冊子しか作れなかったけど、自分の書いた物語を形にできただけでとても嬉しかった。 なのに……。 私は一体、いつからこんな気持ちになってしまったのだろうか。
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